しらね型 護衛艦


本艦は第4次防衛力整備計画で2隻建造された「はるな」型ヘリ搭載護衛艦の拡大改良型である。
第4次防で当初計画したのは第3次防で採用した対潜ヘリ3機搭載の「はるな」型DDHに代え6機搭載の8,300t級大型ヘリ搭載護衛艦(DLH)2隻であった。しかし昭和46年(1969年)の庁案修正作業時に1隻に削減され、さらに第4次防大綱策定後の調整段階において「はるな」型の運用実績の無い段階での新艦種を採用するのは時期尚早との理由により「はるな」型の改造型に落ち着いた。これが「しらね」型護衛艦である。
その為「しらね」型の基本的な配置は「はるな」型を踏襲しており、前部に54口径127mm砲2基とアスロック対潜ロケット発射機1基や、ヘリコプター3機を搭載するほか、関連装備や配置などはほとんど同一であり、基本的な戦術構想も「はるな」型と同じであるので「はるな」型の項目を参考にしてもらいたい。

外見的な大きな変更点については、煙突は2本となり船体も6m延長され、センサー類もより無理の無い配置になっている。
また新造時からMK-25 シースパロー短SAM8連装発射機と2番艦DDH-144「くらま」では護衛艦としては初めて20mm高性能機関砲ファランクスMK-15CIWS2基を装備し(1番艦DDH-143「しらね」は後日装備)するなど対空能力は、改修(FRAM)前の「はるな」型よりも飛躍的に改善され、電子装備は3次元レーダーがOPS-12となり、水上捜索レーダーもOPS-28に改まり、航海レーダーOPS-22、高度測定レーダーOPN-8を装備し、この2種類のレーダーはヘリの着艦誘導などにも使用する。
また対潜装備でも、長距離探知能力に長けたOQS-101に加え、艦尾にはVDSのSSQS-35を装備、2番艦「くらま」では曳航式のSQR-18Aが搭載されており対潜能力も飛躍的に向上してる。しかし一番の特徴は、兵装やセンサーの増加でなく、情報・指揮管制のため大型コンピューター2台 小型コンピューター9台を備え、完全にデジタル・コンピューター処理する戦術データ処理システム「OYQ-3」を搭載し、リンク11とリンク14を護衛艦として初めて搭載されたことであろう。この分野でも「はるな」型をC3I機能でも圧倒しており、ヘリ搭載護衛艦(DDH)x1 ミサイル護衛艦(DDG)x2 汎用護衛艦(DD)x5と対潜ヘリ8機の通称「八八艦隊」と称される護衛隊群の旗艦にふさわしい指揮・統制能力が備わっている。
当初1番艦「しらね」2番艦「くらま」は第3防で建造されたヘリ搭載護衛艦「はるな」「ひえい」と同じ、戦前の日本海軍の戦艦「金剛」型の1番艦「金剛」4番艦「霧島」を受け継ぎ「こんごう」「きりしま」を予定していたが、時の防衛庁長官が「沈んだ船の名をつけるのは縁起が悪い」と難癖をつけ、結局自分の選挙区内にある赤石山脈の白根岳から取った「しらね」にしてしまい、それに合わせて2番艦も艦名を変更し「くらま」にしたと言う逸話が残っている。その為「金剛」「霧島」の名は、イージス護衛艦「こんごう」型1番艦「こんごう」2番艦「きりしま」まで待たなければならなくなった。

また船体が延長された為基準排水量でFRAM前の「はるな」型よりも500tほど増え、5200tとなり、「こんごう」型イージス護衛艦が就役するまでの長い間海上自衛隊最大の護衛艦と言われた。また「しらね」は3年に1回行われる観艦式ではかならず観閲艦(自衛隊最高指揮官すなわち内閣総理大臣が乗艦し艦隊を観閲する栄誉ある任務)となり、イージス護衛艦「こんごう」型が就役した今でも海上自衛隊の顔と言ってもいい知名度と存在感を保っている。
しかし「しらね」型はやはり「はるな」型の拡大改良型であるため、「はるな」型と同じく、空母型船型よりも、ヘリ運用能力・整備能力に多少の難があったのではないかと思われる。(「はるな」型の説明参照)

「しらね」型は「はるな」型と違い初めから「システム艦」として建造された為、FRAMの様な大規模改修は行われていないが、「しらね」型が装備しているMK-25シースパロー8連装発射機は実際にはアスロックSUMランチャーの発射機の改造型で、シースパローもその後に採用されたMk-29シースパローランチャーに搭載してあるRIM-7Fよりも古いRIM-7Eで「しらね」型以降に建造・改修された艦よりも劣っていた為、最近退役した「たかつき」型護衛艦FRAM改修艦「たかつき」からMk-29短SAMシステムを「くらま」のMK-25短SAMシステムと取替えし、「しらね」もつい先日同じく退役した同型のFRAM改修艦「きくづき」の短SAMシステムと取替えして多少対空能力を向上させた。また小規模改装も行っており、その為竣工時とは多少面影が変わっている。

艦載機は当初はHSS-2Bだったが現在はSH-60Jに変更され、将来SH-60Jの拡大改良型SH-60Kを搭載する可能性もある。現在1番艦「しらね」は第1護衛隊群直轄艦(横須賀)で、2番艦「くらま」は第2護衛隊群直轄艦(佐世保)で主に護衛隊群旗艦の任に当たっており、2番艦「くらま」は9.11テロ以後最初にインド洋派遣部隊旗艦として出港し、その後も数回派遣されてる。また2004年に石垣島付近で発生した中国原潜領海侵犯による海上警備行動発令に対しても、「くらま」と汎用護衛艦DD-103「ゆうだち」など複数の艦艇が参加したのは記憶に新しい。

しかしすでに「しらね」型も艦齢ももう25歳を超え、そろそろ代艦の計画が出てきそうであるが、今回の中期防衛力整備計画では代艦は盛り込まれず、もし代艦を建造するとしても13,000tDDHやその改良型とするには、現在の財政事情から言っても実現は難しそうである。

性能諸元

艦名 しらね(竣工時)
全長 159.0m
全幅 17.5m
喫水 5.3m(くらまは5.5m) 
基準排水量 5200t
満載排水量 不明
機関 蒸気タービン 2基 2軸推進
出力 70,000馬力
最大速度 32ノット(くらまは31ノット)
航続距離 防衛機密
船型 長船首楼型
主砲(対空・対艦両用) Mk-45 54口径127mm単装砲 2基
対潜兵装 MK-112 アスロックSUM8連装発射機 1基
対潜兵装 3連短魚雷発射管 2基
対空兵装1 MK-25シースパロー8連装発射機→MK-29シースパロー8連装発射機に換装 1基
対空兵装2 後日装備高性能20mm機関砲 2基 (くらまは竣工時より搭載)
3次元レーダー OPS-12
水上捜索レーダー OPS-28
電子戦 NOLQ-1
射撃指揮装置 72型1型A(127mm砲用)
ソナー OQS-101
艦載機 HSS-2B→SH-60J 3機
乗員 350名(くらまは360名)
計画年度 昭和50年度計画(1975年)
竣工 昭和55年3月17日(1980年)

同型艦

●DDH-143「しらね」
1番艦
造船所 石川島播磨東京
昭和55年3月17日(1980年)竣工
●DDH-144「くらま」
2番艦
造船所 石川島播磨東京
昭和56年3月27日(1981)年竣工

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