たかなみ型 護衛艦
「たかなみ」型は、「むらさめ」型を強化改修した改「むらさめ」型として現在5隻が竣工・建造しつつある海上自衛隊最新鋭の汎用護衛艦である。
艦型の設計は「あさぎり」型(うみぎり)が470億円程度、「むらさめ」型が600億円程度と非常に高価になっていくことから、「たかなみ」型ではコストを抑えつつ、量産による価格軽減高価を考慮し、1998年〜2002年に竣工した「むらさめ」型護衛艦をベースに小改造を施したものを採用している。当初は試験艦「あすか」に置いて試験・正式化され、「むらさめ」型の後期型から採用される予定だった(結局搭載されず)国産の新型FCSであるFCS-3を搭載する「ミニ・イージス」艦を構想していたが、結局予算の都合などにより搭載される事はなく、FCS-3は現在計画中の仮称16DDHまで搭載はお預けとなった。
その為「たかなみ」型は「むらさめ」型よりも基準排水量が100t増えた程度で、艦の大きさ、艦影は「たかなみ」型と「むらさめ」型の違いは少ない。
武装の変化もそれまで汎用護衛艦で搭載され、「むらさめ」型にも搭載されているイタリアのOTOブレダ社で開発された62口径76mm単装砲を、同じOTOブレダ社で開発され、「こんごう」型イージス護衛艦で搭載された127mm単装砲を採用し、対地・対空射撃能力を向上している。またVLSは「むらさめ」型ではMK-41(アスロック用)とMk-48(シースパロー用)の2種類のVLSを採用していたのを、MK-41(アスロック・シースパロー両用)1個(32セル:アスロック16セル・シースパロー16セル)に変更してる。
その為「たかなみ」型では「むらさめ」型のようにVLSを艦首甲板に埋め込むことが出来ず、甲板よりも一段高い位置に搭載している。またそれに伴い「むらさめ」型では艦中央に搭載されいたMk-48
VLS発射機が不要となり、MK-48があった所にはヘリコプター居住区・乗員待機室などが設けられ、ヘリ関係の配置はより合理的は配置となり、90式SSM(SSM-1B)4連装発射機も当位置へ移動している。
将来的には現在防衛研究所で開発されている従来のアスロックの射程を2倍にした新アスロックや、従来のシースパローから「むらさめ」型で搭載されつつある発展型シースパロー(ESSM)のMK-41用RIM-162Bへの換装も予定されている。ESSMはMK-41セルに各4発搭載可能な為シースパロー用の16セル全部を使うと64発ものESSMを搭載することになり、現有の16発だけ搭載することになると4セルで済んでしまうことになり、どのように搭載されるのか注目される。
それ以外の兵装については、ほとんど変更などはなく、哨戒ヘリも「むらさめ」型と同じ哨戒ヘリ1機を搭載、格納庫も2機分確保されている。しかし哨戒ヘリ(対潜ヘリから改称)は、初めてSH-60Kの搭載を念頭に置いた改修が実施されている。SH-60KとはSH-60Jをベースに日本独自に改良を加え、胴体を40cm延長し居住性を向上、対潜魚雷だけでなく、対潜爆弾、対水上目的用にAGM-114Mヘルファイアー対艦ミサイル(正式には対戦車ミサイルの対艦型)や機銃を搭載できる多目的機である。その為「たかなみ」型では若干格納庫を大型化し、ASMや対潜爆弾用の弾薬庫を増設している。SH-60Kは平成17年度に配備されることになっておりそれまで艦載機はSH-60Jを使用し、ASMや対潜爆弾用の弾薬庫は倉庫として使用している。加えて「たかなみ」型では新型の着艦拘束装置であるE-RASTが採用され、移送レールは2本となり「むらさめ」型では困難だった、ヘリ2機を搭載し効率的に運用することが可能となった。
また船体各所には「むらさめ」型と同じく、ステルス性を確保する為上部構造・船体などを傾斜している他、「むらさめ」型でステルス性を損なっている批判されているラティスマストにもステルス用の反射板を搭載するなど、「むらさめ」型よりも1段上のステルス対策を施している。
レーダー関係も「むらさめ」型から変更点もなく、情報処理関係も3番艦までは同じOYQ-9
であるが4番艦「さざなみ」移行は民需型のQ-70システムを使用した新型となる。
しかし本型の最大の特徴は現在海上自衛隊が推し進めているRMA(軍事革命)理論に基き、ネットワーク能力が大幅に強化したことで、MOF(海幕指揮システム)を搭載し、海幕などの作戦データをリアルタイムで入手し、自己の作戦情報をアップデートできる新システムを搭載、また従来のリンク11・リンク14に加え5番艦(最終番艦)「すずなみ」(DD-114)からはリンク16を搭載し、逐次「すずなみ」以外の「たかなみ」型にも装備されることが決定している。このリンク16はリンク11の100倍以上の情報を入手する事・送信することができ、以後護衛艦隊所属艦には装備されるものと思われる。機関は「むらさめ」型より小改正は実施されているが、主機などに変更点もなく、基本的には同じCOGAG方式を採用している。
内部の艤装で大幅に変わったところは、戦闘時を考慮し海曹士用の部屋が「むらさめ」型では12名程度の小部屋に分かれていたのを30名ほどの大部屋に改め、隊員掌握を楽にている点で、一方で先任海曹(CPO)の居住区をグレードアップが図られている。
「たかなみ」型は主に「むらさめ」型の改造による、コスト削減を主題とし「むらさめ」型よりも完成度の高い護衛艦であり、その性能などは一定の評価を与えることができる。しかし一方で「むらさめ」型の改良型としたため、大規模な変更が不可能であり、完全な新型に比べると見劣りし、時代を先取りできなかったと言った批判も存在している。
平成18年には5番艦(最終番艦)が竣工し、「たかなみ」型の建造は終了する。今後の汎用護衛艦は18年度(恐らく19年度に先送りになると思われるが)に予算獲得される、完全な新設計の18DD(仮称)に移行することになる。
艦名 | たかなみ |
全長 | 151m |
全幅 | 17.4m |
喫水 | 5.2m |
基準排水量 | 4550t |
満載排水量 | 6200t |
機関 | COGAG(ガスタービンエンジン4基) 2軸 |
出力 | 60000HP |
最大速度 | 30kt |
航続距離 | 防衛機密 |
船型 | 平甲板型 |
主砲 | OTO 54口径127mm単装砲 1基 |
対空・対潜兵装 | Mk-41 シースパロー短SAM用16セル・アスロックSUM用16セル |
対空兵装2 | 20mm高性能機関砲(CIWS) 2基 |
対潜兵装2 | 3連短魚雷発射機 2基 |
対艦兵装 | 90式SSM4連装発射機 2基 |
補助兵装 | M-2 50口径12.7mm機関銃 |
対空レーダー | OPS-24B |
水上レーダー | OPS-28D |
航海レーダー | OPS-20 |
対魚雷戦用 | SLQ-25 Nixie |
電子戦(ESM/ECM兼用) | NOLQ-3 |
電子戦2 | MK-137 チャフ発射機 4基 |
射撃指揮装置 | FSC-2-31B 2基 |
データーリンク1 | リンク11 |
データーリンク2 | リンク14 |
データーリンク3 | リンク16(5番艦すずなみ(DD-114)から装備 その他は後日装備) |
ソナー | OQS-5 |
曳航ソナー | QOR-2 |
戦術情報処理装置 | OYQ-9(4番艦さざなみ(DD113)より新型へ) |
対潜ヘリ | SH-60J→SH-60K(17年度に) 1機 |
乗員 | 176名 |
造船所 | IHI MU浦賀 |
竣工 | 2003年3月12日 |
●DD-110「たかなみ」
1番艦
平成10年度計画
平成15年3月12日(2003)竣工
造船所:IHI MU浦賀
●DD-111「おおなみ」
2番艦
平成10年度計画
平成15年3月13日(2003)竣工
造船所:三菱長崎
●DD-112「まきなみ」
3番艦
平成11年度計画
平成16年3月18日(2004)竣工
造船所:IHI MU横浜
●DD-113「さざなみ」
4番艦
平成12年度計画
平成17年2月竣工予定(2005)
造船所:三菱長崎
●DD-114「すずなみ」
5番艦
平成13年度計画
平成18年2月竣工予定(2006)
造船所:IHI MU横浜