はやぶさ型 ミサイル艇
平成14年度〜16年(2002-2004)で6隻竣工したミサイル艇。
海上自衛隊は従来の魚雷艇に代わる沿岸防衛用の小型ミサイル高速艇の整備に着手し、冷戦時代末期の61中防(1987〜1990)でイタリア海軍の水中翼ミサイル艇スパルヴィエロ級をベースにした「ミサイル艇1号」(PG-821)型ミサイル艇(基準排水量50トン・速力46ノット 20mm機銃1基 90式SSM2連装2基)18隻を建造する計画を立て、大湊・舞鶴・佐世保の日本海側に警備海域を持つ3地方隊に6隻づつ配備する予定であった。
しかしミサイル1号艇を実際に運用してみると、波浪時の船体強度や耐航性が不足し、特に配備を想定していた冬季の日本海での使用はかなりの制限が加わることが判明した。またファオイルボーン時とハルボーン時の速力や運動性に大きなギャップがあり、構造も非常にデリケートで、稼動時間も短いなどの欠点も露呈、結局大湊地方隊の第1ミサイル艇隊3隻(PG-821〜823)で打ち切られ、次のミサイル艇の構想が検討された。これが「はやぶさ」型ミサイル艇の基礎となる。
ミサイル艇1号型の調達が打ち切りになったころ、冷戦が終結、ミサイル艇の必要数も18隻から9隻(3地方隊各1隊3隻)へ半減され、従来のミサイル艇1号3隻分を差し引いた「はやぶさ」型6隻の整備が決定される。
「はやぶさ」型は、「ミサイル艇1号」の問題点であった冬の日本海でも使用できるように、基準排水量は200tとなり、当初は双胴型の船体の採用を予定、要求速力は40ノット程度とし、平成11年度計画で1・2番艇2隻分190億円の予算が承認された。
しかし1999年に能登半島沖で起きた不審船事件で、北朝鮮の工作船が40ノット以上の高速を出す事が判明、当初予定していなかった工作船に対応する為、設計を大幅に改定することになり、要求速力を44ノットに引き上げ、赤外線装置の搭載・防弾板の追加・衛生通信装置の搭載などを行う為、新たに1・2番艇用に2隻分27億円が追加され、船体も双胴船体では40ノット以上の速力が困難だった為、滑走艇となり、当初の完成予想図とはまったく違う艦影となった。
「はやぶさ」型の主武装である対艦ミサイルは「ミサイル艇1号」型と同じ90式SSM連装発射機2基を装備している。
しかし砲は「ミサイル艇1号」型がF-15などに搭載されているM-61機関砲の艦載型JM-61 20mm機銃のみであったのに対し、前甲板に護衛艦にも搭載されているOTO76mm62口径単装砲に、新たに採用されたステルスシールドを装備、発射機構もOTOブレダ社オリジナルのスーパーラピッド砲と呼ばれる毎分120発(従来のは毎分80発程度)ほどではないが日本独自に改造された、毎分100発を可能としてる新型砲を採用。また工作船などからの近距離からの攻撃に対処する為艦橋後ろ両舷にM-2 12.7mm機関銃を装備している。
しかし「はやぶさ」型が装備しているOPS-18-3対水上レーダーやOAX-2赤外線暗視装置だけでは主武装である90式SSM(射程100〜120km程度)の能力を最大限に活用できる距離で敵を捉える事は難しく、そのため「はやぶさ」型には海幕(MOF)システムと言われる装置を搭載し、所属地方総監部や海幕などの作戦データをリアルタイムで、スーパーバードB衛星通信装置を介して相互に送受信する事が出来るようになっている。
またリンク11を装備し、他の自衛艦やP-3C哨戒機による情報交換により、敵艦を発見・攻撃することが出来ると言われている。
外形はかなり念入りにレーダー断面積(RCS)のシュミレーション計算を行なわれており、特にミサイル艇の特性から敵艦へ突撃する場合を想定し、艦の前方からのRCSを最小とし、76mm砲のステルスシールドやステルス形状のマストなどの他、細かい点にまで工夫されている。また艦中央の艦橋と煙突との間に複合型作業艇を装備し、不審船などの臨検時、特別警備隊など臨検部隊が使用できるように考慮されている。
機関は「ミサイル艇1号」型と同じA-10攻撃機のエンジンの艦載版のLM500ーG07型ガスタービンの石川島播磨のライセンス版を3基(ミサイル艇1号は1基)を搭載しているが、1基あたりの出力は400馬力ほどアップとなり、推進器はウォータージェットにより44ノットの高速を実現している。
また「はやぶさ」型は「ミサイル艇1号」型よりも大型になった為、稼働時間もかなり延び、寝室も用意され3日間程度の航海なら行える能力を保有、調理室もあるが航海中の食事は弁当が基本だと言われている。
現在は、舞鶴地方隊・佐世保地方隊に各1隊3隻づつ装備され任務にあたっている。
艦名 | はやぶさ |
全長 | 50.1m |
全幅 | 8.4m |
喫水 | 1.7m |
基準排水量 | 200t |
満載排水量 | 240t |
機関 | ガスタービン 3基 3軸推進(ウォータージェット) |
出力 | 16200馬力 |
最大速度 | 44ノット |
航続距離 | 防衛機密 |
主砲 | OTO 62口径76mm単装砲 1基 |
対艦兵装 | 90式SSM連装発射機 2基 |
補助兵装 | M-2 50口径12.7mm機関銃 |
水上レーダー | OPS-18-3 |
航海レーダー | OPS-20 |
射撃指揮装置 | FCS-2-31C |
赤外線暗視装置 | OAX-2 |
電子戦1 | NOLR-9B |
電子戦2 | MK-137 チャフ発射機 2基 |
射撃指揮装置 | FCS-2 1基 |
乗員 | 21名 |
計画年度 | 平成11年度計画(2000) |
竣工 | 平成14年3月25日(2003) |
●PG-824「はやぶさ」
1番艇
平成11年度計画
平成14年度3月25日竣工
造船所 三菱下関
●PG-825「わかたか」
2番艇
平成11年度計画
平成14年3月25日竣工
造船所 三菱下関
●PG-826「おおたか」
3番艇
平成12年度計画
平成15年3月24日竣工
造船所 三菱下関
●PG-827「くまたか」
4番艇
平成12年度計画
平成15年3月24日竣工
造船所 三菱下関
●PG-828「うみたか」
5番艇
平成13年度計画
平成16年3月24日竣工
造船所 三菱下関
●PG-829「しらたか」
6番艇
平成13年度計画
平成16年3月24日竣工
造船所 三菱下関