漢(ハン)級/91型原子力潜水艦
【Han Type91】


漢級(級)は、中国海軍所属の攻撃型原子力潜水艦である。
中国は1950年代に主としてソ連製の潜水艦によって潜水艦部隊の創設に着手したが、中ソ間の亀裂により1960年代には国外からの支援無しで開発が行われた。しかし中国には西側はもとより、ソビエトのような科学力、工業力や技術的な資源がないので国産の原子力潜水艦開発には時間がかかった。
漢級として知られる91型級攻撃型潜水艦は1967年に起工された。米スキップジャック級に範をとったような1軸の涙滴型だが、推進システムは加圧水型原子炉一基を動力源とするターボ・エレクトリック方式と言われる。一番艦「潜水艦401」は1974年に就役したが、相次ぐ原子炉の故障のために約10年間は完全に運用できる状態ではなかった模様である。続く4隻の潜水艦は1980年代に就役した。3番艦以降は8m長く、搭載する魚雷の数を減らすことなく対艦ミサイルを搭載できる垂直発射管を搭載している。

これらの潜水艦は同世代の標準と比べてもいささか雑音が大きく1950年代のソ連の設計に基づく装備機器も当然旧式である。そのため、最初に搭載した旧ソ連のESMシステムやパッシブソナーは技術的にも問題が数多くあり、性能そのものはきわめて劣悪と考えられる。そのため、電子機器はフランス製に置き換えられており、3番艦以降についてはさらに広範囲にわたる改造を受けている。

漢級の主たる機能は対水上艦攻撃であり、そのために直進とホーミングをミックスした魚雷と、C-801鷹撃(インジ)対艦ミサイルを装備している。これらの潜水艦は対潜水艦戦を行うには雑音が大きすぎるが、中国の沿岸から遠く離れた海上交通路に対して攻撃を加える能力を有している。

現在では、次世代の93型が漢級に替わるSSN(原子力潜水艦)としてロシアの支援を受けて建造中である。これは1970年代から1980年代のアメリカ海軍のスタージョン級潜水艦と同等である旧ソ連のヴィクターIII の設計を基にしているといわれる。このクラスの1番艦は1994年から葫蘆製作所で建造中であるが、プログラムは相当遅れている。暫定処置として中国海軍はロシアからアクラ級潜水艦のリースまたは、購入を検討している。

2004年11月10日に石垣島・多良間島間の日本領海を侵犯・通過した潜水艦とは紛れも無く漢級である。
「中国原潜領海侵入事件」について政府がまとめた原潜の行動記録によると、原潜は青島を出港した後、東シナ海を南下し、10月下旬には沖縄本島と宮古島の間を通って太平洋に抜けた。そのまま南東に向かい、11月初めにグアム島近海に到達。同島に距離150キロまで接近して周囲を一周したという。その後、原潜は北西方向に戻って再び日本近海に接近。10日に石垣島付近で日本の領海を侵犯した。その後は東シナ海を北上し、16日に姜哥荘(チアンコーチョワン)基地に帰港した。

特に領海侵犯時は海上自衛隊の哨戒活動により詳細な位置をリアルタイムで補足され続けていた。
潜水艦にとって隠密性が最大の武器であることを考えると、出航から帰港まで探知され続けていた事は中国海軍にとっては大きな戦術的失態である。
この事件で中国は公式に突発的の事故とし、「遺憾の意」を表明しているが、何らかの示威行為である見方が強い。

性能諸元

艦名 漢級 (竣工時)
全長 98m
全幅 10m
喫水 7.4m
水上排水量 4,500t
水中排水量 5,500t
機関 90mw加圧水型軽水炉一基
出力 12,000馬力
最大速度 12kt/25kt
潜行深度 通常200m/最大300m
航続距離 無制限
水雷 艦首533mm魚雷発射管6基
対水上レーダー スヌープ・トレイ
中周波ソナー トラウト・チーク
低周波ソナー DUUX-5
乗員 75名
造船所 葫蘆島造船所
起工 1967年
進水 1970年
竣工 1974年

同型艦

●「潜水艦401」

1967年起工
1970年進水
1974年就役
退役済み。

●「潜水艦402」

1974年起工
1977年進水
1980年1月就役

●「潜水艦403」

1980年起工
1983年進水
1984年9月就役

●「潜水艦404」

1984年起工
1987年進水
1988年11月就役

●「潜水艦405」

1987年起工
1990年4月進水
1990年12月就役

トップページ海上兵器>現ページ