F-89
【SCORPION - スコーピオン】

F-89はアメリカで設計された最初の全天候・夜間迎撃用のジェット戦闘機である。愛称のスコーピオンとはその形状が攻撃に移るサソリに酷似にしていたことによる。

本機の開発は1946年にP-61ブラックウィドゥ夜間戦闘機の代替機として設計が開始され、1948年に初飛行した。1949年P-61夜間戦闘機の代替機トライアウトにおいて、カーチスP-87に勝利し、P-89すなわち同機の量産が開始されることとなった。初年度の生産は27機であった。なお実戦配備は1950年である。本機の役割は大戦終結後と東西冷戦の幕開けによりその標的は次第に確立され、その対象明らかだった。核爆弾を搭載し飛来してくるであろうソ連製爆撃機である。夜間戦闘機としてではなく全天候迎撃機としてその能力を発展させていくこととなる。
機体命名法の変更によりP-89からF-89に変わった。最初の生産モデルF-89A(XP-89/YF-89)は双発J-35ターボジェットエンジンを予定していたが、エンジンの開発が間に合わずJ-33を搭載した。直線翼、翼端に大きな燃料タンク、20mm機関砲を装備した無難な設計ではあったが、最高速度840Km/hを記録し未だに主流であったあらゆるレシプロの戦闘機よりも高速で飛行できた。しかし仮のエンジンであるJ-33では明らかに出力不足であり、迎撃戦闘機には必須の上昇力や加速力が不足していた。

F-89BにおいてJ-35エンジンに換装。最高速度が1010Kmと飛行性能が大幅に向上した。F-89Cでは20mm機関砲6門と1200発の弾丸という重武装機となった。そしてなによりもF-89を代表するバリエーションは最も多くの682機が生産されたF-89Dである。F-89Dは翼端に2.75インチのマイティマウス空対空ロケット弾を52発収納するポッドを2基装備し、合計104発という桁外れの強力な搭載力を持った。
非誘導ロケットであるため当然精密な射撃を期待できるはずは無く、104発の弾幕と炸裂時の破片効果で核爆弾を搭載していると思われるソ連爆撃機編隊に攻撃をしかけることを目的とした。射程距離はおよそ1.8kmである。なお、機関砲は撤去され機内におよそ1000リットル燃料タンクが追加され翼端燃料タンクが閉鎖された減少分をわずかだが補った。

またF-89Hではロケットボッドに最大4発のAIM-4ファルコン短射程赤外線誘導ミサイルの装備が可能となり、さらには最大2発のAIR-2ジーニー核弾頭ロケットを装備した。なおAIR-2の弾頭は1.5キロトンである。 1957年にF-89Hはネバダ州の核実験場において高度24000ftよりAIR-2を発射、地上指令により起爆し世界で最初の空対空核兵器の発射に成功した。

F-89は対戦闘機戦闘は一切考慮されていない1950年代における対ソ戦略爆撃機に対抗する主力である。コンベアF-102デルタダガーが就役したことにより、同機は1959年に空軍から退役し1968年まで州兵空軍で就役していた。なお、州兵空軍にAIR-2ジーニーを運用する権限は無かった。

性能諸元

名称 F-89D
製造 ノースロップ
主任務 迎撃戦闘機
全長 16.4m
全幅 18.4m
全高 5.3
主翼面積 56.3m^2
補助翼面積 --
フラップ面積 --
垂直尾翼面積 --
水平尾翼面積 --
乾燥重量 10,978kg
最大離陸重量 21,229kg
最大搭載量 --
燃料搭載量 --
巡航速度 --
最高速度 1010Km/h
実用上昇高度 49,200ft(およそ18分で到達)
航続距離 2560Km
戦闘半径 700Km
エンジン ジェネラルエレクトリック J-35-A-35 MIL:24.9kn AB:32Kn
固定武装 2.75inロケット弾104発
初飛行 1948年
乗員 2名
生産数 1050機(終了)

固定兵装・ガン 空対空兵装 空対地兵装 アビオニクス類
2.75inロケット又は20mm機関砲 2.75inロケット又は20mm機関砲
AIM-4
AIR-2
-- --


派生型

●XF-89(XP-89) 2機
プロトタイプ。
●YF-89A 19機
XF-89の改良型。
●F-89A 48機
初期生産型。AN/APG-33レーダーと機関砲を装備。J-33エンジンを搭載した。48機
●F-89B 30機
F-89AからJ35エンジンに換装。オートパイロット、ILSなど航法系機器類のアップグレード
●F-89C 164機
20mm機関砲を6門装備。
●YF-89D 1機
F-89Bからの改良型。FCS/ロケット弾搭載テスト。
●F-89D 682機
主要生産型。翼端ポッドにマイティマウスロケット弾104発を装備しAN/APG-40レーダー、AN/APA-84セントラルコンピューター、ヒューズE-6火器管制装置を装備。
●YF-89E 164機
YJ71エンジン搭載テストベッド
●F-89E 1機
YJ71エンジン搭載テストベッド
●F-89F 0機
核兵器搭載試験機。生産されず。
●F-89G 0機
射撃管制装置を換装。生産されず。
●F-89H 154機
AIM-4ファルコン短射程ミサイルと42発のマイティマウスを装備。 またAIR-2核ロケット弾を装備。翼端に600ガロン燃料タンクを装備。
●F-89J 350機
F-89DをF-89H仕様に改良した型。F-89の最終型。

配備国

●アメリカ

トップページ航空兵器>現ページ