MiG-31
【FOXHOUND - フォックスハウンド】

MiG-31フォックスハウンドはソビエトのMiG-25を原型に高高度飛行目標迎撃能力を持ちつつ低高度飛行目標迎撃能力を持つよう再設計され、同国の新鋭機MiG-29やSu-27をはるかに上回る世界最高クラスの目視外距離戦闘能力を持つ、現在運用されている戦闘機では世界最大の純迎撃機である。


【開発】

本機の原型となったMiG-25が設計された時代は爆撃機は迎撃が困難な高高度を超音速で飛翔する方向へと発展し、米国ではSR-71やXB-70といった航空機を生み出していた(XB-70は配備されることなく終了したが)。
一方、ソビエトではそれらの高速機に対抗すべく1970年代ごろからレーダーや地対空ミサイルや戦闘機(MiG-25含む)などの発展と共に米国の高高度・高速度を飛翔する爆撃機に対する迎撃能力は飛躍的に向上しつつ有った。
米国からの視点で見てみれば高高度侵攻する航空機の生存性は相対的に低下しており、事実CIAのA-12は北ベトナムのSAMにより被弾していた。撃墜こそ免れていたが、もはや「絶対安全圏」ではない事は明らかであった。
よって米国は高高度・高速度という方針を捨て、レーダー網の下を掻い潜るように低高度侵攻を行う爆撃機を必用としていた。そこで開発されたのがB-1ランサーに代表されるような高い電子戦能力を持ち、低空を亜音速で侵攻し、目標のはるか手前で巡航ミサイルを発射する新たなタイプの爆撃機である。
ソビエトには、このような脅威に有効に対抗できる防空網を構築しておらず、強力なルックダウン、シュートダウン能力を持つ迎撃戦闘機や、低空侵攻機を探知、かつ迎撃戦闘機を指揮する空中早期警戒機が必用であった。
MiG-31が実戦配備された後の話になるが87年5月28日には西ドイツの19歳の青年がセスナ機を操縦し、東ドイツ、ポーランド、ソビエトの国境を低空飛行で越え、首都モスクワの中心部、共産主義の聖地とも言うべき赤の広場に着陸するという前代未聞の事件が起きた。ソ連の低空の防空網は事実穴だらけであった。

低空侵攻する爆撃機を阻止するための迎撃機の開発にはMiG-25の性能向上型が当初言われていたが、最終的にはMiG-25原型に再設計する手段が選ばれた。MiG-25は約マッハ3という世界最高の最高の速度と、高い上昇能力、そして大きな機体は将来の拡張性に優れており、高空にも、低空にも対応できる新型の迎撃機のベースにするには最適であった。
試作型にはYe-155MPという名称が与えられている。Ye-155はそのままMiG-25の試作機、Mは「改」を意味し「P」は戦闘機を意味する。
1979年に量産が開始され、1982年に部隊配備された。

【機体構造】

MiG-31にはMiG-25のような高速性能は要求されていない。よってMiG-25のような通常航空機の構造には使用されない重いニッケル鋼(鉄)を多用した設計は無駄であった。機体構造はニッケル鋼は機体重量の80%から50%へ削減され、チタニウムは8%程度であったが16%と倍増し、アルミニウムは11%から33%と3倍に増えている。軽い金属を多用したため全長が3m近く延長したにも関わらず、自重は僅か1t程度の増加に留まっている。
しかし、それでもMiG-31の設計限界速度はMiG-25と同等のマッハ2.83だと言う。だが、高熱に晒される個所は鉄やチタニウムで保護されているとはいえ、熱に弱いアルミニウムが3倍に増加していることから、実際にマッハ2.83が出せるのかはやや疑問である。兵装を搭載した「最高巡航速度」としてマッハ2.35という数値があるが、実質上の最高速度はマッハ2.35であり、MiG-25が破損を覚悟すればマッハ3を叩き出せたのと同様に機を破壊するリスクが激増するがマッハ2.83を出せるというレベルなのかもしれない。このような例は数多く、F-111アードバークなどは設計最高速度は「相当速い」が、キャノピーが融解する危険性があるため実際の最高速度を計測していない。現代の戦闘機にとって最高速度などは大きな意味を持たないため計測する意味が無いためだ。またRAC-MiGの公式サイトでは最高速度3000km/hの記述が見られるが、より高速であるはずのMiG-25(Ye-266)のFAI公認記録速度は2981.5km/hと、明らかに矛盾している。実際に計測された数値であるかは不明で、マッハ2.83や3000km/hが出せないという確定的な根拠にはならないが、おそらく3000km/hという速度は相当切り上げされていると思われる。

見た目のシルエットは3m近く胴体が延長されたことによりやや胴長な印象を受ける以外大きくMiG-25と変わったところは無いが、全機がレーダーオペレーターが搭乗するため複座化している事が最も重要な相違点である。最重要点であるレーダーオペレーターについてはデータリンク項にて後述する。
MiG-25の実戦機は単座で、複座型は全て練習機であり前方視界を確保するため機首部にコックピットが増設され2つの風防を持ついびつな形状であったが、フォックスハウンドではレーダーオペレーターが搭乗する後席は操縦の必要が無いため前方視界を必用としない。よって胴体に埋め込む形で設けられており前方視界皆無である。一応は離着陸用に格納式ペリスコープを持ち、上部に展開することにより前方視界を得、前席と機械的にリンクした操縦装置による有視界飛行を行うことができるが、大きな抗力を生み出してしまう。亜音速以上の高速飛行時に使用することは無く、通常ギアが出ている間のみしか使用しない。よってペリスコープは事実上離着陸専用である。なおトップの写真はペリスコープを展開している。4毎の鏡を使う事により左右正対させている。

また主翼にストレーキや前縁フラップを追加されたことから、MiG-25の機動性は劣悪であったが臨界AOAの向上が実現し、機動性はやや改善されていると思われる。それでも翼面過重が高いことに変わりは無く、制限過重も5G程度であり対戦闘機ではフォックスハウンドの機動性は皆無に等しく格闘戦闘での機動性発揮は期待できない。
元々、低空を侵攻する爆撃機や巡航ミサイルが主な目標であったフォックスハウンドにしてみれば、これらを追尾する機動性の向上は十分実現できたと言える。
MiG-25では高速度が要求されたため操縦翼アクチュエーターなどは全て機体内部に格納されていたが、MiG-31では一部剥き出しになっている部分も見受けられ、後退角も減少している。
射出座席は後にエアショー事故などで大きな名声を得るズヴェズダ設計局K-36を装備している。

【エンジン】

フォックスハウンドのパワープラントはD-30F6ターボファンエンジン2基である。
D-30F6エンジンはソロビエフ設計局D-30エンジンをアビアドビガデル設計局が再設計したものである。7.04mの全長と2416kgの自重を持ち、戦闘機用のエンジンとしては破格に大きい。その巨大さは他の戦闘機と比較するとよく分かる。戦闘機としては比較的大きいAL-31F(Su-27が装備)ですら全長5m、重量は1500kg程度である。
静止推力も桁違いに高く、ミリタリーで93.2kN、アフターバーナー使用時では152kNに達する。強力なAL-31Fでも125.5kN程度だ。(※1)
ターボファンであることから、高速飛行時はMiG-25のR-15BD-300ターボジェットエンジンに比し、いくらか見劣りするが、燃費は劇的に改善され、機内燃料タンクが1780kg追加されたことも伴い、戦闘行動半径の貧弱さは2倍に延伸されている。
また、それでもMiG-25と同等のマッハ2.83での可動も保証されている。本機のマッハ2.83の疑問は機体構造にて前述したが、ひょっとするとD-30F6が根拠と成っているのかもしれない。
なお、本エンジンはS-37/Su-47ベルクトにも搭載されている。

※1:AB使用時の推力は186kN前後とする記述と152kN前後とする記述が混在している。最新の資料ほど152kN前後とする例が多く、また186kNは他と比べて明らかに突出しすぎているため、ここでは152kNとする。

【ザスロンレーダー】

フォックスハウンドの最も注目すべき点がN007 S-800「Zaslon:ザスロン」パッシブフェイズドアレイレーダーである(もっともどの戦闘機でもレーダーはエンジンと並んで最重要であるが)。NATOコードは「Flash Dance:フラッシュダンス。」
ザスロンは戦闘機に搭載する物としては世界で始めてフェイズドアレイ式を採用したレーダーである。レーダー視程はレーダー反射面積の大きい爆撃機で最大200km、追尾時は120-100km、戦闘機クラスでおよそ走査時120km、追尾時90kmと推定されている。
フェイズドアレイレーダーはレーダービーム方向を、アンテナの機械的な首振りに頼ること無く、一面に並べられた多数の位相変換素子を電気的に操作することにより動かすため、すばやく広い範囲を走査することができるのが最大の特徴である。
ザスロンの最大走査範囲はアジマス幅+-70、エレベーション幅+70-60でありフェイズドアレイレーダーであるザスロンでは殆ど瞬時に1回の走査を完了させることができ、10目標を同時探知できる。1回の探知が瞬時に終わるということは相手に浴びせる電波量も少なくてすむと言う事でもあり、レーダー警戒受信機に探知されにくい長所も持ち合わせている。
同等の範囲を同世代の多くの戦闘機が装備するプレナーアレイレーダーで走査する場合、およそ10-15秒を要す。そのため、捜査範囲を広くすることには慎重さが要求されるが、ザスロンを装備するMiG-31ではそのような制限は一切課せられない。
また、TWS(追跡中走査)能力が高いことも特徴であり、10目標を探知しつつ4目標を同時に追尾(ロックオン)することができ、1回の走査が高速であることから追尾能力も極めて高い。
STT(単一目標の追尾)であればプレナーアレイレーダーもフェイズドアレイレーダーも大差は無いが、TWSでの複数目標の追尾においては、機械的な首振りを必要とするプレナーアレイレーダーでの追尾は数秒に1度の更新になってしまうため、大きく追尾能力が落ちてしまう。プレナーアレイレーダーを装備する同種の迎撃戦闘機であるF-14に比べ、目標探知数(10:24)や同時追尾数(4:6)こそ劣るが、TWSによる追尾は世界でトップの性能を誇った。こうした能力こそがフェイズドアレイレーダー最大の利点である。

ちなみに同じソビエトの戦闘機であるSu-27フランカーやMiG-29フルクラムでは単一目標の追尾しかできず、TWS能力を持っていない。最近のフランカーでは強力なTWS能力を持つものが増えてきたが、現在のロシア空軍ではそういった機は配備されていないか、ごく少数である。これこそが本ページトップに記述した目視外距離戦闘においてMiG-31がロシアで最も強力であるという根拠でもある。

最近ではフェイズドアレイレーダーを搭載する戦闘機は増えてきているが、フォックスハウンドの次に同レーダーを搭載した戦闘機が実戦配備されたのは、1999年、AN/APG-63(v)2を装備するF-15Cであり、その他F-2、ラファール、F/A-22といったフォクスハウンドよりもずっと後の世代の話である。但し、これら最新鋭機は同じフェイズドアレイレーダーでもアクティブ式であり、MiG-31とは方式がやや異なる。
アクティブ式は位相変換素子にそれぞれ電波送受信機が附属し、1つの素子で送受信をそれぞれ独立して行う事ができるが、MiG-31が相違するパッシブフェイズドアレイレーダーでは送受信を別で行う必用がある。アクティブ式に比較し大型かつ重々量化してしまう欠点を持つため通常パッシブ式は戦闘機に搭載することは難しい。当時の技術では航空機に搭載するのに有利なアクティブ式を開発することは不可能であった。ゆえにザスロンは他のレーダーよりも大型である。直径1.1mの大口径を持ち、レーダー全体の重量は1000kgにも達する。MiG-31の次いで重いF-14のAN/AWG-9レーダーの2倍である。
このような大型レーダーを搭載するには巨大な機体(フォックスハウンドのような)を必要とし、機動性をかなぐり捨てなくてはならない。東西問わず「ドッグファイトへの回帰」が叫ばれていた時代にしてみれば、戦闘機としてのバランス面を崩しかねず、ある意味冒険である。よってパッシブ式フェイズドアレイレーダー搭載戦闘機は他国で登場する事は無かった。

なお、大幅性能向上型ザスロンMが開発されており、1985年にMiG-31Mに試験的に搭載された。アンテナ径は1.4mにまで拡大され(アンテナ径はレーダーの絶対的能力限界を左右する)、戦闘機搭載レーダーとしては最長の300-400kmの視程を持ち、24目標を探知、うち6目標が追尾可能と大幅に性能向上がしている。また後述するR-37長射程AAMの運用能力を持つ。ただし、財政状況の悪化もあり試験だけで終了し、実働機への装備は行われていない模様。

1990年にはアメリカのスパイAlexander Tolkachovを逮捕。尋問によりザスロンの機密情報が盗まれたことが判明したため(なお、彼は死刑を執行されている)、レーダーの近代化が行われている。改良を受けたザスロンAは対電子戦能力の向上や他の機との通信が包括的にリンクし、迎撃能力は大きく向上している。またザスロンMで培われた技術をザスロンAにフィードバックしたザスロンAMが開発され、このレーダーはマッハ6以上の目標の探知・追尾や空対地レーダーマッピングなどの機能が追加された。

本機はTP-8 IRST(赤外線捜索追尾装置)を胴体下部に装備しており、必要に応じて展開・格納される。

【データリンクシステム】

AK-RLDNデータリンクシステムを搭載し、MiG-31は地上レーダーサイトが探知している情報を指令を後席に装備するTSD(戦術状況ディスプレイ)に表示することができる。APD-518デジタル空対空データリンクシステムにより、4機のMiG-31間で同等のデータリンクを活用することが可能となっている。
RAC-MiGはこのシステムを用い、1機の編隊長機が3機の僚機を、相互間100km以上の極めて広いラインアブレスト編隊で、BAN-75コマンドリンクを使用し半自動的に指揮することにより、前方200-400km、幅800-900kmの早期警戒・迎撃管制を行えると宣伝している。このような戦闘機を利用した早期警戒をMINI-AWACSと呼びイランイラク戦争でF-14が実施したことで有名である。
元来MiG-31が標的としていた低高度を巡航する目標を探知するには早期警戒機が必須である。しかしソビエトは早期警戒機の開発に大きく遅れをとっていた。ほぼMiG-31と同時期に登場したTu-126モス早期警戒機はルックダウン能力に劣っていたと言われ、その点、こうした能力は大きな利点で有ったと思われる。
また、このデータリンクシステムを活用することにより、正面から2機のMiG-31が接近し、レーダー波を出さず秘密裏に側面から接近したMiG-31が攻撃を実施するというような戦術も行える。最終的に照準時には攻撃を行う機がレーダーによる照準を行う必用がある。IRSTを代わりに用いれば完全に相手に探知されること無く攻撃を実施することができるかもしれない。ただしIRSTの視程はレーダーのように長くは無く、短射程ミサイルの照準しか行う事が出来ないためあまり実用的ではないだろう。
(以上は、MiG-31に限った戦術ではないが。)

こうしたデータリンクでの状況表示・操作やレーダーの操作は全て後席で行い、前席には唯一ヘッドアップディスプレイを装備していることを除き、レーダーディスプレイや戦術状況ディスプレイなど目標を表示・指示する機器を装備していない。よって、自機の誘導や目標選別は全て後席に搭乗するレーダーオペレーターが行い、前席のパイロットもしくはリーダー機より管制を受けた僚機パイロットはその指示に従い機を操縦する。
パイロットが全てを行わなければならないMiG-25に比較してクルーの負荷は激減、かつ高度な迎撃が行えるようになった。脳や手が2倍に増えたことは強力なレーダーやデータリンクシステムにも劣らない大きな利点である。

【兵装】

MiG-25が主兵装として装備したR-40を装備することもできるが、フォックスハウンドの牙となる主兵装は本機専用に開発されたR-33である。R-33(NATOコード AA-9エイモス)は長射程ミサイルである。R-33は100-160km前後の射程を持ち、中間指令、終端セミアクティブレーダー方式の誘導が行われる。発射後に上昇、ロケットモーター燃焼後は降下しつつ目標へと突入し、およそ6-7Gで旋回する標的を撃墜する能力を持つが、長射程ミサイルは対処時間を比較的長く与えてしまうので実際命中を期待できる射程となると50-60km程度であろう。また大型で重いことから急速な旋回には多大なエネルギー損失を出してしまう。しばしばF-14のAIM-54フェニックスと比較されるが、終端誘導に差異はあるが性能的にも欠点もほぼ同格である。
前項データリンクで触れたMINI-AWACS運用とこのミサイルを掛け合わせることで、広い範囲を完全に掌握することができる。命中はせずとも標的機を撤退させれば航空優勢は確保できるのである。
本機はフェイズドアレイレーダーを搭載しているため、複数機ロックオンであっても情報の更新速度は極めてすばやい。よってセミアクティブレーダー誘導でありながら最大4目標に対して同時にR-33を発射、誘導できる能力を持っている。

自衛用に短射程の赤外線誘導R-60(NATOコード AA-8エイフィッド)を装備し、面白いことにフォックスハウンドは胴体右側面に張り出した形でGSh-6-23 23mm6砲身ガトリング機関砲の固定兵装を持つ。MiG-25が同等の任務を請け負っておりながら機関砲は装備されていなかったことを考えると、やはり警告射撃が不可能であることや、フォックスハウンドは基本的にR-33を使用した目視外戦闘を基本とするが、万が一接近された場合に必用であることが再考されたのであろう。

後に最新のアクティブレーダー誘導のR-77(NATOコードAA-12アッダー)中射程ミサイルや射程200-300kmにも及ぶR-37(NATOコードAA-13アロー??)長距離ミサイル、射程300-500kmという対AWACSミサイルKs-172、空対地・対艦ミサイル、面白いものに対衛星ミサイル(ASAT)を装備可能となったMiG-31が登場しているが、ごく少数であり実戦配備はされていないため下記性能緒元および派生型に記載する。

【21世紀のフォックスハウンド】

RAC-MiGは時代の変革からMiG-31の近代化かつマルチロールファイター化した派生型を開発するなど、根強く他国への売り込みを行っている。しかしあまりにも巨大な戦闘機であることや、2006年にはミグやスホーイなどが統合されるため、おそらく今後の戦闘機はフランカー系に統一されてしまうと容易に推定できることから、残念ながらこうした発展の見通しはあまり明るいとは言い難い。90年代後半には中国、およびイランがMiG-31の購入を希望していたが両国共に購入には至らななかった。

ソビエト連邦は崩壊し東西対立の解消と大幅な軍事費削減(とくにロシア)に伴いもはや核ミサイルを搭載した爆撃機や巡航ミサイルをフォックスハウンドが迎撃するような事態は今後起こることは無いと思われる。当初計画されていたフォックスハウンドの最大の標的こそ消えてしまったが、最新戦闘機を配備する余裕はロシアには無い。およそ二百余機のフォックスハウンドは今後もしばらくロシアの防空の猟犬(Foxhound)として配備されつづけるであろう。
なお、ロシアが実効支配するわが国の北方領土にもMiG-31が配備されている。

性能諸元

名称 MiG-31'フォックスハウンド' (参考)MiG-25'フォックスバット'
製造 ミコヤングレビッチ設計局(MiG)
主任務 迎撃戦闘機
全長 22.688m 19.75m
全幅 13.464m 14.0m
全高 6.15m 6.5m
主翼面積 61.6m^2 61.4m^2
乾燥重量 21,825kg 20,768kg
最大離陸重量 46,220kg 41,090kg
最大搭載量 6,960kg 4,000kg
機内燃料搭載量 16,350kg 14,570kg
巡航速度 マッハ0.85 マッハ0.9
最高速度 巡航速度:マッハ2.35
設計速度:マッハ2.82
マッハ2.83
但マッハ3.2の記録もあり(MiG-25R)
実用上昇高度 20,600m 20,700m
航続距離 2500L増槽×2装備時
(亜音速):3,300km
5000L増槽装備時
(亜音速):2,400km
戦闘半径 マッハ2.35高度18,000m飛行:720km
マッハ0.8高度10,000m飛行:1450km
最大400Km
離陸距離 1200m(2500m以上の滑走路が必用) --
着陸距離 800m(ドラッグシュート) --
エンジン ソロビエフ/アビアドビガデル ターボファン
D-30F6:MIL93.2kN AB152kN
ソユーズ/ツマンスキー ターボジェット
R-15BD-300: MIL86.2Kn AB109.8Kn
固定武装 GSh-6-23 23mm6砲身ガトリングガン×1 無し
初飛行 1975年9月16日(Ye-155MP) 1969年(Ye-155)
乗員 2名 (パイロット及びレーダー兵装オペレーター) 1名
生産数 約314機(終了) 1190機(終了)

固定兵装・ガン 空対空兵装 空対地兵装 アビオニクス装備品類
GSh-6-23
23mm6砲身ガトリングガン×1
260発
AA-9/R-33 AS-14/Kh-29(MiG-31BM) NIIP N007 S-800 ザスロン
パッシブフェイズドアレイレーダー
AA-6/R-40 AS-17/Kh-31(MiG-31BM) TP-8 IRST
AA-8/R-60 AS-14/Kh-29(MiG-31BM) Argon-15 16bit ROM64kb
セントラルコンピューター
AA-13?/R-37(MiG-31M) AS-17/Kh-31(MiG-31BM) AK-RLDN
地上迎撃管制データリンク
AA-12/R-77(MiG-31M) AS-13/Kh-59(MiG-31BM)
AS-18/Kh-59M(MiG-31BM)
APD-518
空対空データリンク
Ks-172
AAML(MiG-31M)
NK-25航法装置

パイロン ※1 1 2
3
※1 4
5
6 ※1
AA-9/R-33

AA-6/R-40

AA-8/R-60
  ○

  ○
  ○
  ○
AA-13?/R-37(MiG-31M)


AA-12/R-77(MiG-31M)
Ks-172(MiG-31M) ○? ○?
AS-14/Kh-29(MiG-31BM)
AS-17/Kh-31(MiG-31BM)
AS-13/Kh-59
AS-18/Kh-59M(MiG-31BM)
対衛星ミサイル?(MiG-31D)
兵装例
長距離迎撃(最大ペイロード) -- 増槽
R33

R33

増槽
--
迎撃ミサイル特化 -- R40
R33

R33

R40
--
自衛用ミサイル搭載 --  R60

  ○
R33

R33

 R60
  ○
--

※1 最外のパイロンはMiG-31M/F/BM/FEなど“フォックスハウンドB”のみが持つ。

派生型

●Ye-155MP

MiG-31の試作機。

●MiG-31 フォックスハウンドA

初期型。

●MiG-31B フォックスハウンドA

空中給油装置、ザスロンAレーダーを装備する。MiG-31の主流のタイプ。

●MiG-31BS フォックスハウンドA

初期のMiG-31から、B仕様に改良をうけたタイプ。B型に順ずる。

●MiG-31E フォックスハウンドA

初期のMiG-31の輸出型。ジャミング装置やIFF装置を装備せず電子戦関連装置にグレードダウンを施されている。
カザフスタンへ輸出された。

●MiG-31M フォックスハウンドB

大幅性能向上型。ザスロンMを搭載、胴体下と翼下外側に兵装搭載パイロンが増設され、R-77や射程200-300kmのR-37、射程400-500kmの中間パッシブレーダー誘導・終端アクティブの対AWACSミサイルKs-172を装備し、前席にレーダーディスプレイの追加と風防形状の変更により正面視界が良好になり、後席がグラスコックピット化し大幅な迎撃戦闘能力は飛躍的に向上した。なおGSh-6-23ガトリングガンは撤去された。
直径1.4mにも及ぶザスロンMを搭載するため機首部が太くなり、また主翼が曲線を帯びた形状になりシルエットが異なる。
7機の試作機が生産されたが、予算不足で計画は中止され、量産・運用に至らなかった。

※ Ks-172については試射されたという情報もなく、実在自体も不明。キャノピーの枠の有無、

●MiG-31F フォックスハウンドB

空対地攻撃能力を持つマルチロールファイター型。ザスロンAMを搭載。
MiG-31M同様に後席がグラスコックピット化するなど近代改修を受けている。
量産・運用されず。

●MiG-31BM フォックスハウンドB

基本的な性能はMiG-31Fに順ずるマルチロールファイター型。Kh-29,Kh-31,Kh-59/Kh-59Mなど多様な空対地兵器の装備が可能となった。量産・装備されず。

●MiG-31FE フォックスハウンドB

MiG-31BMの輸出型。量産・運用されず。

●MiG-31MF フォックスハウンドB

MiG-31EFと同等。MiG-31MFという名称が用いられることもあった。

●MiG-31DZ フォックスハウンドA

初期のMiG-31に空中給油ドローグをキャノピー左側前方に装備した試験機。

●MiG-31LL フォックスハウンドA

射出座席試験機。

●MiG-31D フォックスハウンドA

対衛星ミサイルを胴体下に1発搭載する改良を受けた型。
しかし実物のミサイルが製造され、試射すら行われず計画倒れになった模様。

●MiG-31S フォックスハウンドA

商業用衛星打ち上げ母機。MiG-31Dに順ずる。ペイロード100kgならば高度200km、ペイロード70kgなら高度500kmの軌道上に打ち上げることが目的とされたが、運用以前に試験も行われなかった模様。

配備国

●ソビエト/ロシア

MiG-31Mなど配備されなかった機やMiG設計局所属を含め280機を生産。

●カザフスタン

MiG-31Eを34機を調達。

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