Bf109A/B/C/D/E


Bf109は第二次世界大戦前から戦中にかけてドイツで生産され、同国空軍とその同盟国が使用し、ほぼすべての欧州での戦闘に参加し戦後の超音速戦闘機の時代に至るまで小国において現役で活躍したドイツを代表する戦闘機である。
このページでは比較的初期の型式であり、主に第二次世界大戦前から戦中初期に主力であったBf109A〜Bf109Eについて解説する。

Bf109を製造することとなるメッサーシュミット社はババリア地方のバンベルクで、1928年にヴィリー・メッサーシュミットにより設立された。当時は航空機製造工場「メッサーシュミット航空機製造」と称し、グライダーや軽飛行機の設計製作を続けつつ小さいながらにも堅実な経営を保ち、1926年3月15日にはメッサーシュミット有限会社へと成長した。
同年7月30日、同じババリア地方のアウグスブルグにBFW(Bayerische Flugzeug-werke A.G.:バイエルン航空機製造株式会社)が設立された。
その後、州政府の政策的判断でメッサーシュミット社はBFW社に吸収合併されることになった。
メッサーシュミットは独自の設計部門を保持し、メッサーシュミットが設計した機体の製作を優先し、大した実績のないBFW側の設計部門が解散することが認められた。

1935年3月、ベルサイユ条約から脱却したナチスドイツは軍備拡張に乗り出し、ハインケル He51に続く新鋭戦闘機の開発をハインケル・フォッケウルフ・アラド・バイエルンの4社に命じ競争試作を行った。
最終的に、ハインケル社のHe112とバイエルン社のBf109の2社が最終選考に残り、性能的に両機に差はほとんど無かったものの、バイエルン社のBf109が採用されることとなる。この採用には、政治的思考により左右したとの話もある。

1937年初めに就役した最初の生産型B-1はユンカース社のjumo210Dエンジン(600ps)を装備し、武装は7.92mm機銃2門であった。
最高速度470km/h、上昇性能抜群の本機はスペイン内戦においてカーチス・ホーク、ポリカルポフI-15、I-16らを圧倒したものの武装の貧弱さや初期不良などに悩まされた。
しかし、これらの欠点はスペイン内戦における実戦テストにおいて改良されることとなる。そして1938年、待望のダイムラーベンツ社製DB601エンジンを搭載したBf109Eが登場し、1938年に勃発した第2次世界大戦においては性能面で劣るポーランド・オランダ・ベルギー・フランス空軍機に対し圧倒的勝利を収める。
この頃のBf109の大成功によって、バイエルン社の社長に就任したメッサーシュミット技師は、社名をメッサーシュミット株式会社に変更した。
(ここで正式な機種名はMe109に変るが、開発当初の社名を使ったBf109と表記されることが多い)

この後、1940年夏にドーバー海峡上空からイギリス沿岸部に掛けての空域で制空権を巡る戦闘、バトル・オブ・ブリテンが展開された。
この時にはE-3、E-4型が主力になり、イギリス空軍戦闘機隊のスピットファイアMk.Iと性能的にはほぼ互角であった。
しかし、敵地に侵攻して戦うというパイロットには過酷な状況、そしてBf109は航続距離が短く敵地上空には10分程度しか滞空できず、さらには爆撃機の護衛まで行わなくてはならないという状況の中、イギリス空軍の頑強な抵抗を打ち破ることが出来なかった。

Bf109の航続距離の短さは早い段階から分かっており、増槽を装備するなどの計画を検討していたものの、他に優先すべき開発テストが山積みしていたうえ、緒戦期に華々しい勝利を収めた電撃戦ではそうした欠点はあまり問題にならなかったため、しばらくは後景に追いやられていた。バトルオブブリテンではついにこの欠点が露呈したことからBF109E-7以降の機体には落下式増槽の装備が可能となった。

イギリス本土上空の航空戦は膠着状態に陥り、決定的な勝利を収めることに失敗したドイツ空軍は、1940年10月に対イギリス航空作戦部隊を再編成し、一部の部隊をギリシャで苦戦しているイタリア軍を支援するために振り向けた。
このギリシャ・ユーゴスラビア侵攻作戦「メルクール作戦」において、ユーゴスラビア空軍のBf109とドイツ空軍のBf109が交戦するという奇妙な戦闘が行われた。

1941年6月22日未明、西部戦線の膠着状況を打開するとともに資源確保を狙うバルバロッサ作戦が開始され、この時点では既にBf109戦闘航空団の多くが新型のBf109Fへの更新を進めていたが、Bf109Eを装備してバルバロッサ作戦に参加した飛行隊も多く存在する。

なお、同機は派生型が多岐に渡り、エンジンから武装に至るまで千差万別であるため、一概に解説することは難しいため、下記派生型を参照されたい。

性能諸元

名称 Bf109B-1 ベルタ Bf109C-1 シーザー Bf109D-1 ドーラ Bf109E-3 エミール
製造 メッサーシュミット株式会社 (バイエルン航空機製造株式会社)
主任務 戦闘機
全長 8.70m 8.70m 8.70m 8.80m
全幅 9.90m 9.90m 9.90m 9.90m
全高 2.50m 2.50m 2.50m 2.60m
主翼面積 16.35m^2 16.35m^2 16.35m^2 16.35m^2
補助翼面積 -- -- -- --
フラップ面積 -- -- -- --
垂直尾翼面積 -- -- -- 1.31m^2
水平尾翼面積 -- -- -- 2.24m^2
乾燥重量 1,580kg 1,600kg 1,630kg 2,053kg
最大離陸重量 1,960kg 2,160kg 2,160kg 2,610kg
最大搭載量 -- -- -- --
燃料搭載量 ガソリン250L ガソリン337L ガソリン337L ガソリン400L
巡航速度 350km/h(2,000m) 360km/h(3,100m) 355km/h(2,500m) 375km/h(4,000m)
最高速度 460km/h(4,000m) 470km/h(4,000m) 450km/h(4,000m) 555km/h(6,000m)
実用上昇高度 8,100m 9,000m 8,100m 10,300m
航続距離 450km 450km 450km 655km
戦闘行動半径 120km(CAP30分) 120km(CAP30分) 120km(CAP30分) 220km(CAP30分)
エンジン ユンカースJumo210B
液冷エンジン 680hp
ユンカースJumo210G
液冷エンジン 730hp
ユンカースJumo210Da
液冷エンジン 680hp
ダイムラーベンツDB601A
液冷エンジン1,100hp
固定武装 下方に別記
初飛行 1935年
乗員 パイロット1名
生産数 341 58 647 1,246

固定兵装・ガン
Bf109B-1 ・MG17 7.92mm機銃×2
初速840m/s 1000発/分
Bf109C-1 ・MG17 7.92mm機銃×3
初速840m/s 1000発/分
Bf109D-1 ・MG17 7.92mm機銃×3
初速840m/s 1000発/分
Bf109E-3 ・MGFF 20mm機関砲×2
初速600m/s 540発/分 60発
・MG17 7.92mm機銃×2
初速840m/s 1000発/分

派生型

●Bf109V

各タイプの試作機
V1 V2…と続く

●Bf109A

開発テスト用機
計20機製作

●Bf109B-0

先行生産型
各機ごとに装備が異なる

●Bf109B-1

最初の生産型
jumo210B(離陸出力640hp)またはjumo210D(離陸出力680hp)装備 武装MG-17(初速840m/s 発射速度1000rpm) 7.92mm機銃×3
生産数341機

●Bf109B-2

B-1のエンジンをjumo210Da(680hp)に換装した機体

●Bf109C-1

エンジンをガソリンエンジン用燃料噴射装置を取り付けたjumo210G(700hp)に換装し、武装をMG-17 7.92mm機銃×4に増強した機体
生産数58機

●Bf109C-2

C-1の武装をMG-17 7.92mm機銃×5にした機体
計画のみ

●Bf109C-3

MG-17 7.92mm機銃×2 MGFF20mm機関砲(初速550m/s 発射速度520rpm)×2を装備する重武装型
計画のみ

●Bf109D-1

搭載予定のDB600エンジンが間に合わず、急遽B-2と同じjumo210Da(210Gとする資料もある)を搭載して量産された機体
生産数647機

●Bf109E-0

DB601Aエンジンの生産が初期トラブルに悩まされて進まない為、とりあえず同じサイズのDB600Dエンジンを搭載して生産された機体

●Bf109E-1

DB601Aaエンジンを搭載。武装はMG-17 7.92mm機銃×4
生産数1,073機

●Bf109E-1/B

Bf109E-1の胴体下面にETC500/IXbまたはETC50/VIIIラックを装備して最大500kgまでの各種通常爆弾/破片爆弾を搭載できるようにしたBom-benanlage(爆装)型
後にこの種の爆装型はjabo(jagdbomber:戦闘爆撃機型)と称されるようになった
生産数110機

●Bf109E-2

E-1型のプロペラ軸内にMGC/3 20mm機関砲と長銃身(L30)を取り付け、翼内の機銃をMGFFに換装し合計20mm機関砲×3 7.92mm機銃×2とした機体
2機の試作のみ

●Bf109E-3

主翼内武装に20mmMG-FF機関砲を装備した機体
機体は基本的にE-1と同じだが、主翼の兵装装備箇所の構造が強化されている
生産数1,246機

●Bf109E-4

E-3型のキャノピーを角型断面にし、主翼武装の20mm機関砲をMG-FFからMG-FF/M(初速700m/s 発射速度540rpm)に変更した機体
生産数250機

●Bf109E-4/B

E-4型にETC50/VIIIdまたはETC500爆弾ラックを胴体下面に装備した機体
生産数221機

●Bf109E-4/N

E-4型のエンジンをハイオクタン燃料使用のDB601N(1175hp)に変更した機体
生産数35機

●Bf109E-4/BN

Bf109E-4/Nの戦闘爆撃機型

●Bf109E-5

E-1の機体をベースにRb21/18航空カメラ(フィルム長60m、約300枚撮影可能)1台を装備した先頭偵察機
生産数29機

●Bf109E-6/N

E-1仕様の機体に高高度用DB601Nエンジンを搭載し、HK 12.5/7×9航空カメラを2台を装備した機体

●Bf109E-7/N

E-3をベースにDB601Nエンジンを搭載した航続距離延長型
胴体下に300L増槽を懸吊可能

●Bf109E-7/B

E-7の戦闘爆撃機型

●Bf109E-7/Z

DB-601NエンジンにGM-1パワーブースターを装備した出力増強型
GM-1パワーブースターは-90℃で液状化された亜酸化窒素のボンベ3本と噴霧装置からなり
気化した亜酸化窒素を過給機内に噴射することで瞬間的にDB601Nの出力を増加させるシステム
亜酸化窒素の噴射量は60g/秒、100g/秒、150g/秒の3モードを選択することができ、
高度8000mで100g/秒モードを選択した場合には出力が250〜280hp増加し、速度は約100km/hのアップを実現した

●Bf109E-7/U1

主翼下面のSKF/F456Cラジエーターに防弾版を追加装備した地上攻撃用改修型
1942年12月までに208機が改造された
1942年ごろから使用されるようになった改造/改修型を示す"U"(Umruestung:装備用)の
記号を付けた最初のE型で、この"U"は工場のラインで何らかの改修を受けた機体ではなく
ロールアウト後に工場に戻されて戦闘機から他の任務への機種への改造/改修を受けた機体であることを表す

●Bf109E-7/U2

U1型に加えてエンジン下面、燃料タンクにも防弾版を追加装備した近接航空支援用改修型
1942年12月までに265機が改造された

●Bf109E-7/U3

胴体後部にHK12.5/7×9航空カメラを2台装備し、地上部隊との交信用に
FuG 17 VHF無線機を搭載した長距離戦闘偵察機型

●Bf109E-8/N

E-7/Nの生産が始まるまでの間の運用テスト用に生産されたMG17×4の軽武装型で、
E-1をベースにした機体にDB601Nエンジンを搭載し胴体下面に300?増槽を懸吊可能としていた
生産数は60機

●Bf109E-9/N

E-7/Nの胴体後部にRB50/30航空カメラ(フィルム長120m、約380枚撮影可能)1台を装備した長距離戦闘偵察機
主に既存の機体から改造された

●Bf109E/trop

コクピットに地上待機用の日除け、後部胴体内部に自衛用のkar98小銃を装備し、防塵フィルターを装備した熱帯地仕様機
防塵フィルター装備機はBf109E-7が主要を占めるが、E-4、E-8、E-9にも装備された

配備国

●ドイツ
●フィンランド
●ルーマニア
●ハンガリー
●スイス
●ブルガリア
●ユーゴスラビア
●チェコスロバキア
●クロアチア
●スペイン

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